会長挨拶 「ゆらぎながら、つながる」


 鳥取県臨床心理士会ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。


 2023年に新型コロナウイルス感染症が5類へ移行して以降、私たちの生活から制限は少なくなりました。しかし、あのパンデミックを通じて経験した目に見えない不安や人々の間に生じた反応は、私たちの心に決して消えることのない刻印を残しました。


 私は昭和51年の生まれですが、振り返れば2011年の東日本大震災以降、社会のあり方に対するどこか落ち着かない感覚や焦燥感が、私の中でゆっくりと、でも確かに募り続けてきたように思います。そんな時間のなかで訪れたコロナ禍は、私にとって「自分の生きている社会や自分自身のあり方」を改めて見つめ直す、大きな契機となりました。「このままでいいのだろうか」「何か自分にできることがあるのではないか」という切羽詰まったような思いを抱いたのは、きっと私だけではなかったはずです。


 昨今の国際情勢や自然災害など、社会が常に不安定さをはらむなかで、私たちは時として無力感に陥りそうになります。しかし、そんな時こそ、一度立ち止まって自分の足元を見つめ直し、自分にとって本当に大切なものを選び取ろうとする「個人の力」を信じることが、大きな意味を持つのではないでしょうか。


 正解のない時代に、誰かの言う「正しさ」に自分を無理に合わせるのではなく、自分なりの「心地よさ」や「人間らしさ」を再発見していくこと。誰かの設定した高すぎる目標を追うのではなく、「今日は機嫌よく過ごせた」という自らのささやかな手応えを積み重ね、周囲の人と緩やかにつながり直すこと。


 こうした一見小さく個人的な営みのなかにこそ、この不安定な時代を生き抜くための「しなやかな強さ」と、社会をより良い方向へ変えていく確かな希望が存在すると、私は信じています。


 ただ、こうしたことが「わかっていても実際に行動するのはなかなか難しい」ということも、私自身の経験からよく分かります。だからこそ、一人で抱え込むのではなく、誰かと一緒に取り組んでいくことが必要なのだと思います。それは友達かもしれないし、家族や専門家であるかもしれません。


 そして、病院・企業・役場・学校など、さまざまな場所において、私たち心理士(師)は、こうした日常の「ゆらぎ」のなかで立ち止まっている方々の、一番の「伴走者」でありたいと願っています。そこにあるのは特別な治療だけではなく、日々の暮らしの延長線上にある心のサポートを大切にしたいという気持ちです。


 当会は、臨床心理士ならびに公認心理師の会員が、こうした「日常の心理支援」の質を高めていけるよう、研修活動や連携強化に邁進してまいります。専門職同士が手を取り合い、地域の皆様の「こころの健康」と「豊かな日常」を支えていく所存です。
皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

 


                             令和8年1月

                             会長 廣澤 あすか